CPAP以外にもある!睡眠時無呼吸症候群の治療法を徹底解説

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CPAP以外の治療法とは?

なぜCPAP以外の治療法が必要なのか

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療法といえばCPAP(シーパップ)療法が一般的ですが、すべての患者にとってベストな選択肢とは限りません。CPAPは中等症以上のSASにおいて高い効果を発揮しますが、「毎晩機器を装着する負担がある」「継続が難しい」「生活スタイルに合わない」など、患者の状況によって適応しにくいケースも存在します。

こうした背景から、近年ではCPAP以外の代替治療法も注目されており、症状の軽重や原因、ライフスタイルなどに応じて適切な治療法を選ぶことが重要になっています。

CPAPが合わない人の主な理由

以下はCPAP治療が合わない・続かない主な理由です:

  • 寝ている間のマスク装着による不快感

  • 睡眠中にホースが外れてしまう

  • 音や圧迫感が気になって眠れない

  • 旅行や出張が多く、機器の持ち運びが不便

  • 通院の継続が難しい

こうした問題を抱える患者にとっては、より手軽で日常生活に負担をかけない治療法が求められます。次に紹介するのは、CPAP以外の代表的な治療法「口腔内装置(マウスピース)」です。

口腔内装置(マウスピース)療法

治療の仕組みと対象者

口腔内装置(Oral Appliance:OA)は、いわゆる「マウスピース型の治療法」です。主に軽症〜中等症の睡眠時無呼吸症候群(SAS)に適応されるもので、就寝中に装着し、下あごを前方に固定することで舌の沈下を防ぎ、気道を確保する仕組みになっています。

この治療は以下のような方に向いています:

  • AHI(無呼吸低呼吸指数)が軽度〜中等度の患者

  • CPAPの装着が困難または拒否感が強い方

  • 医師の判断で口腔内治療が可能とされた方

ただし、重度のSAS患者には効果が限定的な場合があるため、適応の可否は専門医の診断が必要です。

メリット・デメリット

口腔内装置には次のような利点があります。

メリット:

  • 小型で携帯性に優れ、旅行時も使いやすい

  • 電源不要で取り扱いが簡単

  • 装着時の圧迫感が少なく、CPAPよりも快適と感じる人が多い

  • マスクやホースが不要で、見た目も目立ちにくい

デメリット:

  • 効果には個人差があり、重度の無呼吸には対応しきれないことがある

  • 顎関節症のある人や歯並びが悪い人には適さない

  • 長期間使用すると歯列に影響が出る場合もある

  • 使用中に唾液の分泌が増えたり、違和感を感じることがある

したがって、「無理なく継続できるかどうか」「自分の症状に対して十分な効果が出るか」が、治療選択時の重要なポイントとなります。

費用と保険適用の可否

口腔内装置による治療は、医師の診断に基づくSAS治療であれば保険が適用されるケースがあります。

  • 保険適用時:15,000円〜20,000円前後(3割負担)

  • 自費診療の場合:50,000円〜100,000円程度が相場

初診・検査費用を含めるとやや費用はかさみますが、CPAPより安価で導入しやすいのが特徴です。
ただし、装置は定期的に調整や交換が必要なため、定期通院を継続できる体制が望まれます。

外科的手術による治療法

代表的な手術とその適応

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の原因が、扁桃肥大や鼻中隔の湾曲、舌根の肥大、上気道の狭窄など明確な解剖学的要因による場合、外科的な手術が検討されることがあります。主な手術方法は以下の通りです:

  • UPPP(口蓋垂口蓋咽頭形成術)
     口蓋垂や軟口蓋、咽頭周辺の余分な組織を切除して気道を広げる手術。

  • 扁桃摘出術/アデノイド切除術
     子どもに多い治療法で、肥大した扁桃やアデノイドが無呼吸の原因になっている場合に行われます。

  • 鼻中隔矯正術
     鼻づまりが慢性的な人に対し、鼻の通りを良くすることで呼吸を改善します。

  • 顎矯正手術(下顎前方移動術など)
     骨格性の問題が大きい場合に行われ、かなり高度な外科的処置が必要です。

これらは、根本的な原因を除去できる可能性があるため、CPAPや口腔内装置の効果が不十分なケースに選択肢として残されます

効果・リスク・回復期間

外科手術のメリットは、一度の手術で長期的な改善が期待できる点にあります。しかし、当然ながらリスクやデメリットも存在します。

効果:

  • 無呼吸回数の大幅減少(ただし成功率は個人差あり)

  • 呼吸の質の向上、日中の眠気改善

リスクやデメリット:

  • 出血や感染などの手術リスク

  • 術後の痛みや腫れ、食事制限が必要

  • 効果が十分に得られない可能性もある

  • 入院期間や術後の安静期間が必要

特にUPPPなどの手術は、「いびきは減ったが無呼吸は残った」という報告もあり、必ずしも万人向けではありません。そのため、事前に精密検査や複数の医師による意見を得ることが重要です。

また、術後は生活習慣や体重管理を続けないと再発する可能性もあるため、あくまでも総合的な治療の一環として手術を検討するべきです。

体重管理と生活習慣改善

減量の効果と科学的根拠

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の発症には、肥満が非常に大きなリスク因子として知られています。特に首回りや舌・咽頭周辺に脂肪が蓄積されると、気道が狭くなり、睡眠中に呼吸が止まりやすくなるのです。

実際、体重を5〜10%減らすだけで、無呼吸の回数(AHI)が著しく減少するという研究報告も多数あります。また、減量は血圧・血糖・脂質などの数値も改善し、SASに伴う合併症のリスク低減にもつながります。

無呼吸症候群が診断された場合、まず医師から「減量を試してみましょう」と提案されることも少なくありません。特にBMIが25以上ある場合は、体重管理が非常に効果的な治療手段となります。

寝る姿勢・飲酒・禁煙などの影響

生活習慣の見直しも、CPAP以外の治療手段として非常に有効です。以下のような日常の習慣が、無呼吸を悪化させる要因となることがあります。

仰向け寝の回避:
仰向けに寝ると、舌がのどに落ち込みやすく気道をふさぐ可能性があります。横向きに寝るだけでいびきや無呼吸が軽減される人も多いため、体位の工夫は重要です。

飲酒の制限:
アルコールには筋弛緩作用があり、のどや舌の筋肉がゆるむことで無呼吸が悪化します。特に就寝前の飲酒は避けるべきです

禁煙:
喫煙によって気道の炎症やむくみが起こり、呼吸がしにくくなることがあります。無呼吸症候群のリスクを下げるためにも禁煙は強く推奨されます

規則正しい生活と適度な運動:
生活リズムを整えること、特に就寝・起床時間を一定に保つことは、質の高い睡眠を確保する上で重要です。また、有酸素運動や筋トレなどの習慣は、体重管理だけでなく睡眠の質向上にも貢献します。

このように、生活習慣の見直しは無呼吸症候群の治療・予防の基本であり、CPAPを使わずに改善を目指す人にとっては必須のアプローチといえます。

新たな治療法:舌下神経電気刺激療法

治療の概要と対象者

舌下神経電気刺激療法(Hypoglossal Nerve Stimulation:HNS)は、比較的新しい治療法として注目を集めています。この治療法は、舌の動きをコントロールする舌下神経に対して、睡眠中に電気刺激を与えることで、気道の閉塞を防ぐ仕組みです。

具体的には、ペースメーカーのような小型装置を胸の皮下に埋め込み、就寝時にリズミカルな刺激を送信することで舌の筋肉を前方に引っ張り、気道を開かせるという方法です。

この治療は以下のような人に向いています:

  • 中等症~重症のSAS患者

  • CPAPが効果的だが継続できない、使用に強い不快感がある

  • 解剖学的にHNSが有効と判断された人(スクリーニング検査あり)

費用・副作用・国内導入状況

この治療は日本でも徐々に導入が進んでいますが、まだ限られた医療機関でのみ実施されているのが現状です。費用面では以下の点に注意が必要です。

費用の目安:

  • 自費診療が中心で、100万円以上が相場

  • 機器代、手術費用、術後の管理費を含むと数百万円に及ぶことも

副作用・注意点:

  • 装置の違和感(胸部や下顎の刺激感)

  • 手術に伴う感染リスク

  • 電池交換が数年に一度必要

  • MRIが受けられない、または制限がある場合あり

また、治療の適応には事前に気道の動きを確認する「薬剤誘発睡眠内視鏡検査」などのスクリーニングが必要です。この検査で舌根沈下型の閉塞であることが確認されると、舌下神経電気刺激療法の適応とされることがあります。

日本ではまだ保険適用になっていないため、治療を希望する場合は専門クリニックを受診し、詳しい情報を収集することが大切です。

このように、舌下神経電気刺激療法は、CPAPが合わなかった人にとっての有力な代替手段として、今後の普及が期待されています。

自分に合った治療法を選ぶために

症状の重症度とライフスタイルを考慮する

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療には、CPAPを含めさまざまな選択肢がありますが、重要なのは「自分に合った治療法を見極めること」です。治療法の選定は、単に医師の判断だけでなく、患者自身の症状の重さ、生活習慣、継続可能性などを踏まえたうえで行うべきです。

たとえば、

  • 軽度〜中等度であればマウスピース療法も有効

  • 肥満が原因の場合は減量と生活習慣改善をまず優先

  • CPAPが効果的でも継続できないなら舌下神経電気刺激療法を検討

  • 明らかな解剖学的問題があれば外科手術が適応される場合も

このように、治療の選択は非常にパーソナルで、多角的な視点が求められます

専門医の診断を受ける意義

SASの治療は自己判断で進めるのが難しく、正確な診断と適切なアドバイスを受けることが何よりも大切です。まずは、呼吸器内科や耳鼻咽喉科など睡眠医療に詳しい医師の診察を受け、ポリソムノグラフィー(終夜睡眠検査)などで正確なAHIを把握することが基本です。

その結果に応じて、どの治療法が最も効果的か、どこまでの改善を目指すかを話し合うことができます。

また、治療開始後も定期的に通院し、

  • 症状の改善状況の確認

  • 副作用の有無

  • デバイスや装置の調整

などを行いながら、長期的に無呼吸の再発や進行を防ぐ体制をつくっていく必要があります

一人で抱え込まず相談を

SASは一見すると「ただのいびき」と誤解されがちですが、放置すれば高血圧や心疾患、脳卒中などのリスクを高める深刻な病気です。「CPAPが合わなかったから諦める」のではなく、他の治療法の可能性を積極的に探っていくことが、健康維持への第一歩となります。

どんな治療法にもメリットとデメリットはありますが、医師と二人三脚で「あなたにとって最良の治療法」を見つけることが最も大切です。

まとめ

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療といえばCPAP療法が有名ですが、すべての患者にとってベストな選択とは限りません。マウスピースによる口腔内装置、外科的手術、生活習慣の見直し、そして最新の舌下神経電気刺激療法など、CPAP以外にも多様な治療法が存在し、それぞれに適応と特徴があります

今回の記事では、以下のような治療法を紹介しました:

  • 口腔内装置(マウスピース)療法:軽度〜中等症のSASに効果的。保険適用あり。

  • 外科的手術:構造的な異常を取り除く治療。根治的だがリスクもある。

  • 体重管理・生活習慣改善:無呼吸の根本原因を減らす基本的な対策。

  • 舌下神経電気刺激療法:CPAPが合わない中〜重症患者への新しい選択肢。

そして、どの治療法を選ぶにしても、「自分にとって継続できるか」「効果が出ているか」を重視し、専門医のサポートを受けることが何より大切です

SASは「ただのいびき」と軽視されがちですが、放置すれば命に関わるリスクもあります。早期の診断・対策が、日中の眠気・集中力低下・生活習慣病リスクの軽減につながります。

もしCPAPに抵抗があったり、他の治療法を探しているなら、ぜひ今回紹介した方法を検討し、専門医に相談してみてください。「自分に合った治療法」を見つけることが、健康的な睡眠と生活を取り戻す第一歩です。


参考・引用記事

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